すごく面白かったです。
としか書けない自分を残念に思いつつ、まだ読んでない方はぜひお勧めです。と言ってもわざわざ勧めなくても十分有名な本ですが(笑)僕は文芸春秋で読みました。
20代のお笑い芸人徳永とその先輩神谷、ふたりの物語です。作者又吉直樹さんの経験、見たり聞いたりしたもの、あるがままを描ききっている印象です。素晴らしい小説です。
この小説に目次をつけるならこんな感じ。
花火大会でビールケースの上で漫才をするシーン
居酒屋で先輩神谷と話す漫才論
公園で楽器を演奏する男に神谷が語る表現とは何か?
食えない漫才師神谷を献身的に支える真樹さんという女性の存在
楽しめない合コン
お笑いライブと苦悩
真樹さんに男ができた。だけど僕は真樹さんの人生を肯定する。
神谷の借金・豊胸手術、徳永の引退。
私白野は、20代の半ばテレビの仕事をしておりました。その仕事のひとつに深夜のお笑い番組がありました。と言っても1クール(3カ月)で終わりましたが(笑)番組を立ち上げるってとっても大変です。がっかりしましたが、とても興奮した思い出があります。今はもうありませんが、博多駅の横に吉本の劇場があったのですが、そこに若手が集い毎日ライブをやっていて、僕もそのころ時々通いました。皆さんとっても面白かったです。ですが、その中でテレビに出れるのはほんの一握りで、さらに何年も出続けるのはさらにたいへんなこと。その厳しさを垣間見ました。そういった僕自身の思い出もあり、徳永と神谷がとてもリアルに思い浮かびました。
芥川賞選考委員が徳永と神谷を、とても愛おしく思えるという内容のことを書いておられました。なかでも、小川洋子さんが指摘した箇所、「誰に攻め込まれても崩れない布陣で王将を守り、誰も攻めてこないと気づくまで待ち続けた」は、主人公徳永の幼少期を見事に表現していて素晴らしいと私も思います。
そして、この小説を読んで若者が「自分の人生を選んで生きる」ことの尊さを感じ、尊重したいとの思いが私の中に芽生えます。しかし、それはなにも若者に限ったことではなく、少しこじつけかもしれませんが、元気が出る麻雀教室においても、僕の関わり方はこれまでと変わらず、麻雀も連続性と一回性を併せ持つゲームなので、経験と知識に基づく確率を、可能性が0パーセントでない以上は、押しつけることなく、その人の選択を尊重したいと思うのです。